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猫に小判、抹茶に羊羹

役に立つことは多分ない。美味なるものには毒がある

「未婚男性は短命」は本当か

 良く目にするのが「未婚男性は既婚男性より寿命が8年くらい短い」というもので、「だから結婚した方が良い」という結論に導くというもの。もっともこれは少し間違いがあって、「既婚」ではなく「有配偶者」としたほうがいい。

 この理屈にどうも疑問を感じるので調べてみた。

 

https://www.asahi-kasei.co.jp/arc/service/pdf/824.pdf

 の表1を見てみよう。実は離別(つまり、離婚)した場合、未婚者よりも余命が短くなるという傾向が見て取れる。一方女性の方はむしろ伸びるというのだから、「家族のために・・」なんて頑張っているお父さんはまったくもって報われない。

この統計で注目しておくのは、平均余命の推移だ。1955年から1995年の間で、平均余命は

有配偶男性:+7.0歳

死別男性  :+9.0歳

離別男性 :+4.5歳

未婚男性 :+12.9歳

ということで、未婚男性の余命の差が6歳程度も縮まっている。さまざまな要因が考えられるけども、1980年から1985年くらいにかけて急に差が縮まったところが面白い。

 現在、結婚しても1/3くらいは離婚してしまうようだけど、それを加味すると、結婚した人と未婚の人の寿命の差は5歳くらいになってしまう。

 

 ところで、「平均」という言葉はかなり注意が必要だ。確かに数学的な意味では平均値が取れるけれど、それを「母集団全体がそのような属性を持っている」という風に勘違いしてはいけない。たとえば、年収1000万円の人が10人ずつ地区Aと地区Bに住んでいて、ここに年収500万円の人が10人、B地区に住んだとしたらそれぞれの平均年収はAが1000万円のままなのに対して、Bは750万円となる。でも、だからとちって、B地区にもともと住んでいた人の年収が下がっているわけではない。

 同じ理由で、他の条件が同じなら同じ余命・・すなわち結婚しているか否かに関係ないはずなのに、結婚していない側に短命な人の割合が増えればその分、平均余命は短くなる。

 このため、たとえば結婚しているのかどうかというのが大きな要因だというためには、他の要因による影響が無いようにしなくてはならない。

 では、今回の場合「他の要因」は無いのだろうか。ここですぐに思い浮かぶのが年収だ。男性の婚姻率と年収に相関関係が見られるということからもわかるとおり、未婚者と既婚者では平均年収が違うだろうということは容易に想像できる。

 そこで、年収と寿命の間に相関があるのかを検索してみると、米国での調査結果が見つかった。それによると、年収の上位10%と下位10%では平均寿命に10歳の差がある。この差はほぼ年収に比例する。つまり、ちょうど中間あたりの層を基準にすると年収によって±5歳程度変化があるということだ。

 そして、未婚者と既婚者の間の年収がどうなっているか探すと

http://president.jp/articles/-/20926?page=4

 という、面白いグラフがでてきた。

 未婚者の場合、男女の年収格差はほとんど無い。既婚男性は未婚男性よりも圧倒的に収入が高くなる。一方、女性は既婚者のほうが低くなる。「男女の年収格差」の実態についてはまた別の機会にしよう。

 

 ここからわかるとおりで、平均年収が高い層が結婚しているため、「婚姻中」の層の方が平均年収が高くなる。そして「年収と平均寿命」の関係と重ね合わせれば、婚姻中の人の平均寿命が長いという結果がでるのは至極当選である。

 つまり「婚姻中か否か」という属性によって、平均収入に差のあるグループを作り出していたということだ。

 

 それでもなお「内助の功」を主張するのもまた自由ではある。ただし、平均寿命の伸びが未婚者を大きく下回っているという現実をみれば、その功は今のお年寄り世代よりはるかに小さくなっている、つまり以前のような貢献度は無いという結論には同意せざるを得ないだろう。

 

 結婚したからといって、寿命が延びるわけでもないし、結婚しないからといって寿命が縮まるというものでもないと言うより無いだろう。

 しかも、ものの調査によると、仕事中より家庭にいるときのほうがストレスを強く感じているらしい。女性の場合、離別したほうが平均寿命が延びるというのもこのことが指摘されている。実は同じことが男性についても言えるのではないだろうか。

 

 つきつめてしまうと「結婚とは命を削って幸福感を得ようとするもの」ということになる。身も蓋もないどころか、まるで薬物中毒のようなものだという結論になってしまうけど、それもまた事実として受け入れざるを得ないかもしれない。